位相を揺らす — FM
sin(carrier·t) の位相に、もう一本の sin(ratio·t) を足し込む。位相を別の波で揺さぶると、滑らかな正弦波が細かい起伏を持ち、倍音が立ち上がる。sin(carrier·t + index·sin(ratio·t)) の形で、index が揺さぶりの深さ、ratio が揺さぶる波と元の波の周波数比。
FM(周波数変調)。搬送波(carrier)の位相を変調波(modulator)の出力でずらす合成。sin(c·t + I·sin(m·t)) を展開すると、c の周りに c ± m、c ± 2m、… と等間隔の側帯波が並び、その振幅は変調指数 I に応じたベッセル関数で決まる。I を上げるほど離れた側帯波まで強くなり、倍音が増える。m/c が整数比なら側帯波が整数倍音に重なって楽音、非整数比なら不協和な金属音や鐘の響きになる。Chowning が 1970 年代に発見し、ヤマハ DX7 が世に広めた。
揺さぶる側の sin(ratio·t) だけを一本引く。位相に足し込む前の素の変調波で、ratio が変調波の山の数を決める。
ratio がゆっくり伸び縮みして、山の数が増えたり減ったりする。この変調波の値を、搬送波の位相に index 倍で足し込む。index が 0 なら足す量が 0 で、搬送波の素の正弦波がそのまま出る。index を上げると、変調波の山の所で搬送波の位相が速く進み、谷の所で遅れて、波形が伸び縮みしてとげとげしくなる。
index が 0 を通る瞬間は素の正弦波で、深くなるほど波形に細かい起伏が増える。倍音を一本ずつ足す加算合成と違い、足しているのは位相の中の一本だけで、出てくる倍音の本数が index 一つで変わる。次に ratio を変える。carrier を固定して ratio を整数と非整数で往復させると、波形が周期的に閉じる楽音と、周期からずれて崩れる非整数比の形が切り替わる。
ratio が整数を通る所では波形が一周期で閉じて左右の繋ぎ目が揃い、整数からずれると周期がずれて起伏が乱れる。ratio を 2、index を中くらいに固定すると安定した楽音の波形になり、ratio を 1.41 のような非整数にすると鐘や金属のような崩れた波形になる。index が倍音の多さ、ratio が倍音の並び方を決める二つのつまみで、加算合成とは別の道から角の立った波形に届く。