周波数の比が、図形になる
横軸を時間にする代わりに、x に sin(a·t)、y に sin(b·t) を割り当てると、二つの周波数の比が一枚の閉じた図形になる。a と b が 1:2 や 2:3 のような単純な整数比だと、線がぴたりと重なって安定した模様になる。比が無理数に近いと線が閉じず、面を塗りつぶす。
リサージュ図形。x と y にそれぞれ周波数の違う正弦波を割り当てた曲線。x = A sin(a t + φ)、y = B sin(b t) で、a:b が有理数 p:q のときだけ周期 2π·q/a で軌道が閉じ、整数 p+q が小さいほど単純な形になる。比が無理数なら閉じずに矩形を稠密に埋める。位相差 φ は図形の向きと開き具合を決め、1:1 で φ を 0→π/2 と動かすと線分から円まで連続に変わる。Jules Antoine Lissajous が 1855 年、二つの音叉の振動を鏡で合成して観測した。
x に周波数 a の sin、y に周波数 b の sin を入れて、t を 0 から一周ぶん進めながら点を繋ぐ。a:b を 1:2、2:3、3:4 と切り替えると、それぞれ別の閉じた曲線が出る。位相差 phase を少しずつ動かすと、同じ比のまま図形が開いたり捻れたりする。
整数比のあいだは線が自分自身の上に戻って閉じ、phase が回ると図形がねじれる。a:b の分子と分母を大きくすると、ループの数が増えて編み目が細かくなる。比を [1, Math.PI] のような無理数に近い組にすると、線が二度と同じ道を通らず矩形を埋め尽くしていく。
単純な比ほど図形が素直に閉じる対応は、耳の協和とも重なる。これに減衰を足して、振幅が時間とともに落ちるようにしたのが harmonograph。実際の振り子が摩擦で止まりながら描く図に近い。x と y をそれぞれ複数の減衰する sin の和にして、各成分に Math.exp(-d·t) の減衰を掛ける。
x も y も三本の減衰する sin の和なので、振幅が時間とともに小さくなり、渦を巻きながら中心へ収束する。周波数を整数からわずかにずらしてあるため、線がぴたりと重ならず繊維のような束ができる。decay を小さくすると収束が遅くなって巻きが増え、freq を整数ちょうどに揃えると束がほどけて一本の閉じた曲線に戻る。協和の幾何が、そのまま絵の骨格になる。